平泳ぎの話 1

水泳ニッポンのお家芸、平泳ぎ。
過去、オリンピックの競泳で獲得したメダル42個のうち平泳ぎは17個で自由形の18個に次いで2番目ですが、金メダルだけで集計すると20個中11個が平泳ぎ(ちなみに自由形4個、背泳ぎ2個、バタフライ1個、リレー2個)。まさに『お家芸』です。

他の泳法と違って、水中で進行方向に逆らう動きがあり抵抗が大きいので、抵抗を減らした効率の良い泳ぎができれば、パワーに頼らなくても速く泳ぐことができます。日本人が平泳ぎで好成績を残してきた秘密もこのあたりにあるのではないでしょうか。特に、バルセロナ五輪(1992年)の女子200m平泳ぎで金メダルを取った岩崎恭子選手は、極めて抵抗の少ない泳ぎをしていました。

進行方向に逆らう動きのほか、足の甲ではなく裏側で水を捉えるキックや、1ストロークの間に1回ずつしかないプルとキックのタイミングなど、他の泳法と異なるポイントが多く、水泳選手の中でも得意・不得意が最もはっきり分かれる種目のようです。

トビ亀は4泳法泳げるようになった小学5年生のとき、気づいたら平泳ぎが最も得意になっていました。最初から得意ではありましたが、マスターズ水泳の世界に入ってからは、色々と研究・工夫することでタイムを伸ばしていますので、その内容を紹介していきたいと思います。平泳ぎの得意な人にも、不得意な人にも参考になれば幸いです。※トビ亀の実力はプロフィール欄に記載のとおりです。マスターズの年間ランキングでいうと、40歳区分の平泳ぎで1ケタ程度。世の中、トビ亀よりも速いマスターズスイマーは沢山いますので、そのことを踏まえて読んでください。


トビ亀流平泳ぎのポイント

1.減抵抗とストリームライン
2.プルとキックのタイミング
3.強いキックと重心移動


では早速、1つめのポイント『減抵抗とストリームライン』から。平泳ぎではプルでリカバリーするとき、キックで脚を引き付けるときに進行方向に逆らう動きをしますので、ここでの抵抗を減らす必要があります。

1−1.プルのリカバリーで抵抗を減らす
プルのリカバリーで抵抗を減らすポイントは、(1)プルを後ろまで掻きすぎない (2)リカバリーで無駄な上下動を入れない (3)リカバリーでできるだけ素早く肘をまっすぐにする の3つです。プルで大きな推進力を得ようとして後ろまで掻いてしまうと、リカバリーの距離が長くなってしまうため抵抗が大きくなります。体格・筋力・ストローク技術によって変わるので、どこまでプルを掻くべきかというのは一概に言えません。最終的には自分に適したポイントを見つけることになりますが、減抵抗という観点からは一度浅めのプルを試してみることをお勧めします。

二つ目はリカバリーでの無駄な上下動を減らすこと。オリンピックや世界選手権では、水上をリカバリーしているトップ選手の泳ぎを見ることができます。豪快で格好いいですよね。抵抗を減らすためにいいと習ったのか、トップ選手の真似をしているのか分かりませんが、オーバーアクション気味に水上リカバリーをしているマスターズスイマーをよく見かけます。しかし、ほとんどの方は正しい水上リカバリーができておらず、むしろ抵抗を増やす泳ぎになっているように見えます。

トップ選手はボディ・ポジションが高く、プルの最後に掻き込んでくるパワーもスピードも高いので、『自然と手のひらが水上に出てきている』のです。したがって、手のひらだけでなく肘も高い位置にあります。その位置から肘を絞って、前腕部をまっすぐに前方やや斜め下に伸ばしています。一方、誤ったリカバリーをしているマスターズスイマーは、ボディ・ポジションが高くなく掻き込みのスピードも速くないので、自然と手のひらが水上に出ることはなく肘も低い位置にあります。にも関わらず、無理やり手のひらを水上に出す。結果、肘は水中にあるまま、手のひらを顔の前で合わせた「拝むような格好」になり、肘と手のひらを結ぶ線が水面に対して大きな角度を持つことになります。そして、その位置から刀を振り下ろすようなリカバリーをしてしまう。このリカバリーだと前腕部で大きな抵抗を作り出すことになります。

ではどうしたらよいか?
トビ亀は、(1)プルの最後、自然な位置(プルの大きさで変わるが、目安は胸の前くらい)で手のひらを合わせる (2)そこから前方やや斜め下に戻すリカバリーをお勧めします。

1−2.キックの引きつけで抵抗を減らす
腕と比較して、大腿部は進行方向から見た面積が大きいので、キックで引きつける際の減抵抗はプルのリカバリー以上に重要になります。キックの引きつけで抵抗を減らすポイントは、(1)上半身と太ももが作る角度を大きめにする (2)膝が開きすぎないようにする (3)引きつけの最後で足首を返す の3つです。

膝をお腹に近づけるように脚を引きつけて上半身と太ももが作る角度が直角に近づいてしまうと、太ももで受ける抵抗が大きくなります。膝を前方に引きすぎないようにして、足首をお尻に近づけるような意識で脚を引きつけると、上半身と太ももが作る角度が大きくなり、太ももが受ける抵抗を減らせます。ただし、上半身と太ももの角度が極端に大きくなってしまうと、キックの蹴りだしで力を入れにくくなり、推進力を生み出せなくなるので注意が必要です。

脚を引きつけるとき、膝が広がってしまうことも抵抗増大の原因になります。膝を開きすぎないように引きつけることで抵抗を減らせます。ただ、極端に狭く引きつけるには膝の柔軟性が必要ですし、無理やり狭めて引きつけた状態から膝下を回旋させてキックを打つと膝を痛めることになりますのでご注意を。

最後は引きつけるときの足首の返し方。平泳ぎは足裏で水を捉えるので、脚を引きつけながらどこかのタイミングで足首を返す必要があります。足首の返しのタイミングが早すぎると、足の甲部分が進行方向に逆らって動くことになるので、抵抗になります。足首をリラックスさせて、足裏が水面と水平になる状態をキープしながら脚を引きつけて、キックを蹴りだす直前に足首を返すの理想ですね。

1−3.グライドするときの抵抗を減らす
50mのような短距離ではグライドする時間はほとんどないと思いますが、100mや200mになると、キックの後にわずかながらグライドする時間が生じます。泳ぎ方やキックの強さによってグライドの時間は変わりますが、グライドするときにスピードが高まり前方に進みますので、グライド姿勢での抵抗を減らすことも重要です。これは一言、ストリームライン(けのび)に尽きますね。手の先から足の先まで一本の棒になるようなイメージで、とにかく伸びる。特に200mではテンポが遅くなるので、グライドで伸びるほどストローク数を少なくでき、その結果、体力を温存できてタイムの短縮につながります。ストリームラインは後述のプルとキックのタイミングにも関係してきますので、日頃からしっかり練習しておく方がいいですね。


文字ばかりの読みにくい日記をここまで読んでいただき、ありがとうございます。今日はここまでにさせていただき、続きは後日紹介したいと思います。

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